体温
たくさんのコードにつながれて、周りにはいかめしい機械が並ぶ。
一定の機械音と、それに同調して動くグラフ。
貴方と僕をさえぎる、冷たいガラス。
このガラスを破って、貴方に触れようと何度思ったか知れない。
無機質な空気に包まれた冷たいベッドでは寒いでしょうから、
僕の体温で貴方を温めて上げましょう。
その代わり、
一人ぼっちで寂しい僕を、貴方のその広い胸で温めてください。
僕に。暗闇で閉ざされた僕に、明るく澄んだ空を見せてください。
貴方のそのスカイブルーを。
ハッと目が覚めて、ぼんやりと戻ってきた視界にここが自室だと知る。
カーテンの隙間から差し込むかすかな光。
真っ暗な夜が終わりを告げ、新しい一日が始まろうという明け方。
一定の寝息を立てる貴方が隣にいる事実に、
先ほどの恐怖が夢であったと知り、安堵の息を漏らした。
少し長めの前髪を梳き、頬に掛かる金色のそれを指で流して、触れた。
よく見ると、まだあの時の傷跡がそこかしこに残っていて、
その衝撃の凄まじさを物語っている。
ドミニオンのローエングリンをストライクで受け止め、AAを守った貴方。
誰もが助かるはずがないと思ったのに、貴方は今こうして僕の隣ですやすやと眠る。
それでも未だに、貴方を失ったと思ったあの時の恐怖を拭い去ることが出来なくて、
貴方に触れて、貴方の体温を感じて、ようやく安心できるのだ。
手から伝わる貴方の体温を、もっと身体で感じたくて、
貴方の胸に擦り寄った。
貴方と僕を遮るものは一切なくて、貴方の全てを直に感じる。
貴方の体温が僕に流れ込んで、僕の体温が貴方に流れ込んで、
そして僕たち二人の体温は、同じになる。
目の前の広い胸に軽くキスをしたら、…ん、と貴方が身じろいだ。
「・・・キラ?」
まだ眠気の残る甘い声で、僕の名を呼ぶ貴方の優しい声。
貴方のこの温かな体温に包まれていたかったから、
僕は寝た振りをする。
反応を示さない僕に、まだ寝ていると思ったのか。
貴方は一度大きなあくびをすると、また寝息を立て始めた。
僕を抱きこむように、廻された腕。
貴方の体温をより感じられて。
「ムウさん…」
大好きな貴方の名前を小さく呟いて、僕もまた眠りにつく。
今度はきっといい夢が見られるはずだ。
貴方の体温を感じること。
それは僕たちが生きているという証。
僕たちが、幸せと言う証。
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全く書く予定のなかったお題更新。
ネタも何にも考えていなかったんですが、
お題の更新履歴を見ると、月イチであることが判明。
ってなわけで、急いで9月分を仕上げたわけなんですが、
どっかで見たことあるようなネタですみません。
でもこういう雰囲気の話、かなり好きなんです。
2004.09.23 |
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