抑えられないこの気持ち






「本当に大丈夫か?」
「えぇ、僕にやらせてください。」
「…じゃ、何かあったらすぐ呼ぶように。」










シュッと空気の抜ける音と共に、医師が部屋を出て行き
僕はベッドの傍らに座った。
ベッドには、MIAと言われたあの人が。
2年前、僕たちはヤキンドゥーエ宙域で、ザフトと地球軍とを相手に戦った。
僕は、あの人の父親のクローンだというクルーゼを倒し、
AAに戻ってきて初めて聞かされた、あの人のMIAの知らせ。

ぼろぼろの機体で、自身を全く省みず、
あの人はドミニオンの放ったローエングリンを一人で受け止め
AAを守った…。


不可能を可能にする。


あの人の口癖が鮮明に頭の中をこだました。





まさか、再びこの人を目の前にすることが出来ようとは。

”不可能を可能にする”と言ったけれど。
彼の最期を耳にする限り、それは不可能でしかなく。
彼の口癖を、僕自身の願望でのみ信じていたのだと思っていたのに。



彼はまだ奥深いところにいるらしく、まだ意識は戻っていない。
だけれど。
目の前の人は紛れもなく。
かつてエンディミオンの鷹と呼ばれたムウ・ラ・フラガ、その人なのだ。
見た目だけじゃない。



僕は気づいていた。



初めて紫色のウィンダムを目にしたとき。

敵に体当たりする気なのかとでも思わせるように
ギリギリまでスピードを緩めず突っ込んでくるところとか。
戦闘での引き際だとか。



そのMSの操り方は、あの人特有のそれであった。






少し痩せたのか。
でも、彼の一見硬そうに見えて意外に柔らかなくせ毛は以前のままだ。
長さは違うけれど。
身体にも無数の傷があって。
端正な顔にある、眉間から頬にかけての大きな傷跡を指でなぞった。
ローエングリンを直射したにも拘らず、この程度の傷で済んだのは
奇跡としかいいようがない。

ぱたりと、その傷の上に水滴が零れるのを見て、
はじめて自分が涙を流していることに気づく。

「っ…ぅぅ・・・ムゥ・・さ・・・ん・・・」


2年前無茶をした怒りと。
今まで連絡を全くよこさなかった憤りと。

彼が生きていた喜びと。


全てがない交ぜになって、嬉しさなのか怒りなのか
わからない涙が、愛しい人の顔を濡らしていく。




早く目を覚まして。

その青い瞳で僕を見て。

眩しい金色の髪を揺らしながら、僕の名前を呼んで。

その大きな身体で僕を抱きしめて。





もう二度と離れないって約束して。




そう願って、自分の涙で濡れた唇を。
意識のない貴方のそれに重ねた。




>>next




久々…といいますか(笑)
種デス33話に触発されました。
フラキラー!!待ってたんだよーこの時を!!
この二人って、思っていた以上に
心が繋がってたんだって思ったお話でした。
2005.06.12

                  

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