悩める青少年 15






今日は私立サンライズ高等学園の体育祭。
天気もこれ以上ないほどに素晴らしい晴天である。
爽やかな青空の下、頭脳明晰だけでなく、容姿端麗も兼ね備えた生徒が多いと、
有名なこのサンライズ学園の体育祭なだけに、
生徒の父兄だけではない大勢のギャラリーで、グラウンドは溢れかえっていた。












「・・・!!しまった…」


「どうかしたんですか、アスラン?」



ふわりとした緑色の髪を揺らし、ニコルがやや心配そうな面持ちで言った。


「あぁ、体育帽を教室に忘れてきてしまったみたいだ、取りに行って来るよ。」


はちまきは持っていたのだが、
騎馬戦の騎手は体育帽を着用で出場することになっていた。
今ならまだ教室に取りに行っても競技開始までには間に合う。


「アスラン、騎馬戦は、この次の次の競技ですから。」
ニコルの親切に、サンキュと返し、俺は教室に向かって走った。
後ろでイザークが、怖気づいて逃げるなよ!と叫んでいたが、
もちろんそんなことには答えずに。



教室へと向かいながら、競技プログラムを思い浮かべる。
今は教師対抗リレーが始まったところだ。
その次は確か、借り物競争だったか?
出場競技の一つ前の競技中に整列していなければならない。
余裕で間に合うだろうが、急いで戻るに越したことは無い。
グラウンドから一番近い玄関から、校舎内へと入った。


ここからだと、普通科の校舎を通って、自分の教室に行くことになる。
普通科と特進科の校舎は別棟だが、途中で繋がっているのだ。
俺の属しているざふと組はいわゆるエリートばかりの特進科で、
普通科とは全く異なったカリキュラムの為、あまり普通科の生徒とは交流が無い。
それ故、普通科の校舎にはあまり行くことがなかった。
特進科のものとはどことなく違う雰囲気を感じつつ、
俺は普通科の校舎内を足早に歩いた。















「ほら、トリィ、見てごらん。フラガ先生が走る番だよ!ガンバって!先生!」

グラウンドから離れた遠い教室から、こっそりと応援しているのが分かったのか、
一瞬だけフラガ先生がこちらを見た気がした。
前走者からバトンを受取り、フラガ先生が走り出す。
金色の髪が、太陽に負けないくらい眩しく輝いていた。
フラガ先生の数学教師チームは今2番手だ。
1番手は非常勤講師チームのバルトフェルド先生。
さすが、アンカーなだけあって、どのチームも強者揃いだが、
1位争いは、非常勤講師チームと、数学教師チームのみとなっていた。
徐々にフラガ先生とバルトフェルド先生との距離が縮まっていく。
二人の走者はついに並んだ。
美術教師とはいえ、フラガ先生がライバルだと言っていただけに
バルトフェルド先生もなかなか手強い。
どちらも譲らずの攻防が続く。
思わず僕は窓枠から乗り出して叫んだ。


「フラガ先生ッ!!」


僕が言ったのが早いか、フラガ先生がバルトフェルド先生を
ゴール直前で追い抜き、そのままゴールした。
二人の手に汗握る走りにグラウンドが一気に湧く。

「やったよ!トリィ!フラガ先生が一番だ!」

僕に答えるかのように、トリィも僕の頭上を何度もぐるぐると回り、祝福してくれた。







「トリィ、トリィ」







機械鳥の鳴き声が戸が開け放たれた教室から聞こえてきた。
この鳴き声には聞き覚えがあった。
否、”聞き覚え”なんてものではない、ソレを作ったのは他でもない自分なのだから。
しかし、ソレをあげた幼馴染とは、幼い頃に別れて以来会っていない。
桜吹雪の舞う中、すこし悲しそうに笑ったアイツの笑顔。
あれから暫くの間は手紙のやり取りもあったが、
途中から音信不通になってしまった。

まさかそのアイツが同じ学校にいるわけが無い。
でも、その”まさかではない”方の可能性にすこしだけ期待をし、
俺は、声が聴こえる教室を覗いた。




そこにいたのは、幼馴染と同じ栗色の髪の男子生徒と、
その周りを飛び回っている緑色の機械鳥。





「っ!!…キ・・ラ?・・・キラなのか?」





突然の呼びかけに驚いてか、びくりと肩を揺らした後、
その栗色の髪の少年がこちらを向いた。

紫色の大きな瞳、それは間違いなく、幼馴染のキラのもので。



「…あ、…・・・・ア ・ス・・ラン?」


「キラ!キラなんだろっ?!」

「わわっ!!」

ずっと俺の心を縛り付けていた紫色の瞳に再会することができ、
俺は思わずキラに抱きついていた。
身体はもちろんあの頃よりはズイブンと大きくなったけど、
紫色の瞳はもちろん、驚いたときの反応なんかは昔のままだ。



「キラ!会えて嬉しいよ!」

「ちょっ・・アスラン、苦しいって!」



無意識に力いっぱい抱きついてしまっていたようで、
キラが俺を引き剥がした。
それでも、もう二度と離すものかと俺はキラの両手をぎゅっと握り締める。
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえずキラがどうしてここにいるのかを聞こう。


「キラ、お前、どうしてここに----・・」


その時だった。



「キラっ!!!」


「っ!?」


俺の言葉を遮ったのは、この教室の担任だった。
金色の髪を揺らし、息せき切ってキラの名を呼んだ。


「フ・・フラガ先生!」


キラの顔が一瞬明るくなったのを俺は見逃さなかった。


「ん?…君はざふと組の・・アスラン・ザラか?」


フラガ先生が俺の名を呼ぶ。表面的には優しい声色だったが、
彼の視線はキラの手を握る俺に冷たく突き刺さるような感じがした。
その視線の鋭さに、俺はキラの手を離す。

フラガ先生が一歩一歩ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
それはとても威圧感に満ちていた。

「君は。」

鋭いまなざしで、フラガ先生が俺に話しかける。
蛇に睨まれた蛙のように、俺はハイとしか返すことが出来なくて、
そんな自分に情けなさを感じつつも、身動きが出来なかった。




「確か、君は騎馬戦の主将だろう?行かなくていいのかな?」




そうだ、俺はその騎馬戦で使う体育帽を取りに行く最中だったのだ。
教師対抗リレーに出ていたであろうフラガ先生がここにいるとなれば、
もう既に騎馬戦の一つ前の競技である借り物競争が始まってしまっているという事だ。


「スマン、キラ!また後でっ!」


俺は、フラガ先生にも一礼し、教室を後にした。









冷たい目だった。
俺が一礼した瞬間、フラガ先生と目が合った。
まるで俺に早くここから去れ!とでも言うような、威圧的な視線。
自分の教室へと向かいながら、俺は考えた。
フラガ先生は、教室に入って来ると同時にキラの名を呼んだ。
アレは、あそこに「キラが居る」ということを確信していた様子だった。
キラのほうも、フラガ先生があそこに来ることを知っていたみたいだったし。
…まさか、待ち合わせてた、なんてことは…ないよな。


だがひっかかるのは、あの時のキラの顔。



フラガ先生が教室に入ってきたときの、
あの嬉しそうな、顔。
それは、幼い頃から全く変わっていない、心底嬉しい時の。


一抹の不安と、幼馴染と再会できた喜びがない交ぜになって、
俺の心境は複雑だった。






続く

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ついにアスラン王子登場ー!!!
長かったよ、もう一年くらい出てこないんじゃない感じでしたね。
しかもアスラン出ずっぱり!で全然フラキラがラブついてない〜(>0<)
実はこの後、フラキラシーンを入れたかったんですが、あまりに長いのでここで切りました。
ちょっぴりフラガ先生が黒かったです…まさか黒くするつもりは無かったんですけど
アスラン王子があまりにキラ姫にくっつくもんだから…つい。

次回はフラキラシーン書きますー☆
ではではまた。



     

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